【2022/1/1 1面】新春対談「人が輝く日本へ」


あけましておめでとうございます。新春対談は、大和総研の熊谷亮丸副理事長と公明党の山口那津男代表です。語らいでは、コロナ禍からの経済再生に向けて、人が輝く日本を築く取り組みの重要性が浮かび上がりました。

■消費の喚起や弱い立場の人を支える政策が重要に(熊谷)

■子育て・教育支援充実で全世代型社会保障を構築(山口)

  • 熊谷亮丸(くまがい みつまる)1966年生まれ。東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了。ハーバード大学経営大学院AMP(上級マネジメントプログラム)修了。大和総研では、専務取締役、リサーチ本部長、チーフエコノミストを兼務。著書に『ポストコロナの経済学』など。内閣官房参与(経済・金融担当)

成果上げたワクチン接種

 山口 新型コロナウイルスへの対応は試行錯誤の連続でした。今後は、新たな変異株「オミクロン株」も含めた感染“第6波”に備え、医療提供体制の強化、ワクチンの追加接種などを通じ、国民に安心感を届けていく決意です。

 熊谷 感染拡大防止こそ、最大の経済対策です。わが国では、ワクチン接種が世界最速ペースで行われたことが奏功しました。公明党は早くからワクチンの重要性を訴えていましたね。

 山口 はい。公明党はワクチンを感染対策の“切り札”と定め、海外製品の入手から迅速接種までを強力にリードしました。昨年7月末に高齢者のほとんどが接種を完了し、若者らの接種も進んだことで、感染者の減少につながりました。

 熊谷 日本は感染対策で非常に成功したと言えます。衛生観念が高く、強制されずとも3密(密閉、密集、密接)回避やマスク着用を励行する国民性を生かし、厳格な行動制限を課さずに、感染者数や死者数を先進国の中でも特に少ない水準に抑え込みました。

 山口 欧米のロックダウン(都市封鎖)のような社会経済活動の全面的な停止を回避したことで、日本経済は落ち込みの“谷”を比較的、浅くすることができたと思います。

 熊谷 私たちの分析でも、日本の緊急事態宣言は、ロックダウンと比べて経済への悪影響が限定的でした。雇用調整助成金の特例措置などで失業率も抑えられました。一方、日本の弱点も浮き彫りになりました。デジタル化の遅れや医療提供体制の脆弱性などです。

マイナカード普及が急務

 山口 デジタル化の遅れを痛感したのは、コロナ禍の影響を受けた人々への給付を検討した時です。各種行政手続きのオンライン申請に活用できるマイナンバーカードを普及させていれば、より簡便に迅速な給付ができたでしょう。

 熊谷 現状では、本当に困っている人に的を絞った迅速な給付は困難ですが、マイナンバーカードを基盤としたデジタル化が進めば可能になるでしょう。公明党が主導した新たなマイナポイント事業は非常に良い政策です。

 山口 ありがとうございます。カード普及と消費の喚起へ、カード保有者・新規取得者に最大2万円分のポイントが付与されます。

 熊谷 一方、医療提供体制には、▽病院が多く医療人材が分散▽救命救急医などの専門医が不足▽医療機関の広域連携が不十分――といった構造的な問題があると見ています。今こそ改革に着手するべきです。

 山口 大事なご指摘です。必要な入院ができないコロナ患者を生んでしまった事実を重く受け止め、さまざまな事態に柔軟に対応できる医療提供体制の構築に向け、全力で取り組みます。

コロナ禍から景気を回復

 熊谷 同時に大切になるのが、コロナ禍からの景気回復です。行動制限などで、お金が十分に使えなかった国民の過剰貯蓄は40兆円超に上ります。これが消費などに回っていけば、大きな“追い風”になります。

 山口 感染状況の見極めを大前提に、消費の“呼び水”として、「Go Toキャンペーン」などを実施していきます。

 ワクチンの接種済証や検査での陰性証明を確認しながら、飲食やイベント開催などの制限を緩和する「ワクチン・検査パッケージ」の取り組みも着実に進めていきます。

 熊谷 「ポストコロナ」を見据えると五つの潮流があります。

  1. サステナビリティ(持続可能性)
  2. ダイバーシティ(多様性)
  3. インクルーシブネス(包摂性)
  4. 産業構造の激変
  5. 中央集権から自立分散型ネットワークへの移行 ーーです。

 特に「持続可能性」の観点から「全世代型社会保障」の構築が重要です。少子高齢化が進む中で、高齢世代を現役世代が支える構図は限界を迎えています。現役世代の負担が過大になる中、賃上げをしても消費に回らなくなっているのです。今後は負担能力がある高齢者には支え手に回ってもらう。そうして生まれた財源の一部で子育て支援を充実させるなど、現役世代の負担を減らす必要があります。

 山口 日本は年金、医療、介護など高齢者向けに財源を使う仕組みは、改善・充実を図るべき点や制度の持続に向けた課題がありますが、比較的整っています。

 一方、子育て・教育に関する公的支出は国際的に見ても十分ではありません。中長期的な支援の充実に向けて、「子育て応援トータルプラン(仮称)」の策定・実行などを通じて、子育て・教育を年金、医療、介護と並ぶ4本目の柱に立てて、社会保障を全世代型に広げていく決意です。

公明に国民の思いつかむ力

 熊谷 心強いです。「多様性」や「包摂性」を大事にし、誰もが輝けるようにすることも重要です。格差・貧困の拡大は社会の分断を生み、経済にも悪影響を与えるという研究結果があります。非正規雇用労働者への分配強化や同一労働同一賃金の徹底など、弱い立場の人に焦点を当てて、命を守り暮らしを支える政策が必要です。

 「大衆とともに」を掲げる公明党には、国民の思いを的確につかみ取る持ち味を生かし、社会の分断を防ぐ役割を期待しています。

 山口 しっかりと役割を果たしていく決意です。全国の議員が深く胸に刻むのが「大衆とともに」の立党精神です。今年は、この指針が党創立者により示されてから、60年の節目です。

 熊谷 公明党の「生命・生活・生存を最大に尊重する人間主義」との政治理念は、幼児教育・保育の無償化やコロナワクチン接種無料化などの実績にも表れています。今後も自民党と切磋琢磨しながら、政治を安定させ、諸課題の解決を進めてください。

 山口 はい! そのためにも夏に行われる参院選を勝ち抜かねばなりません。全ての議員が日々、立党精神を体現しながら、国民の期待にしっかりと応えていけるよう決意も新たに頑張ります。


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