10月30日(木)、福井市で開催された中核市サミットに参加させて頂きました。
会合では、東京大学社会科学研究所の宇野重槻教授による基調講演を拝聴。
宇野教授は島根県隠岐島ご出身、育ちは八王子市で、令和臨調第3部会 主査も務められている、まさに地域と行政の未来を深く見据える方です。
「令和臨調」とは、正式には「令和国民会議」といい、日本の将来像や喫緊の課題への対応について、政官民の垣根を超えて議論し、政策提言を行うことを目的に設立された組織です。教授が主査を務める第3部会は、主に人口減少や地域社会のあり方といった、日本の根幹に関わる課題を担当しています。


講演のテーマは「地域から新しい日本をつくる〜中核市に何ができるか〜」。
教授は、2009年に「未来への希望」について研究を始めたきっかけとして、幸福度No.1の福井県からの声かけがあったことを紹介されました。長年の研究から見えてきたのは、「過去に挫折経験のある『個人』や『社会』の方が、未来への希望を持っている」という興味深い事実。挫折を希望に繋げるメカニズムの探求を、10年以上続けられています。
そして、フランスの思想家トクヴィルの言葉「民主主義の鍵は首都にあるのではない。地域にある。地方自治にある。」を紹介し、力強く主張されました。
目次
📉 直視すべき課題:人口減少と「日本の所有絶対神話」
講演は、多くの人が目を背けがちな日本の未来の課題を直視することから始まります。
人口減少と災害リスク
- 2070年には8700万人という人口予測(社人研推計)がありますが、これは外国人人口の増加やコロナ後の出生率急回復という前提に基づくもので、「かなり眉唾」と指摘。
- 最も深刻な課題として、人口減少地域を災害が襲うリスク、そして巨大化する東京の災害への警鐘を鳴らされました。
多死社会と所有権の問題
- 多死社会の到来は、相続と空家の激増を招きます。
- この問題の根幹にあるのが、「日本の所有絶対神話」です。空家、放置山林、農地、所有者不明地が全てネックとなり、特に災害復旧・復興においても大きな障害となっています。
- 「日本の所有権は強すぎる」として、所有から利用へとパラダイムを変える、全体的な改革の必要性が強く提言されました。
🔑 提言と変革:複数居住地とDXの本質
令和臨調第3部会での提言は、当初「悲観的だ」と批判されながらも、今や「当然」という風潮に変わったと宇野教授は言います。その主要な提言と、変革の方向性について解説されました。
提言1:「複数居住地」の実現
- 人と地域の関わり方を多様化(副業、兼業、社会貢献)。
- 住所は1箇所であるべきか?という根本的な問い。
- 住民票や税制を含めた全体的な改革により、サービス提供と負担の矛盾を解消し、「複数居住地」の実現を目指す必要があります。
地方の役割の再定義とDXの本質
地方自治体の「自前主義」には限界があります。
| ❌ 従来の自前主義 | 💡 今後の方向性(DXの本質) |
| 住民サービスの「作り込み」 | 共通のプラットフォームの上に地域の個性を咲かす |
| 一人で何でも知っているスーパー公務員 | 「組み合わせ」による問題解決の模索 |
| デジタル化そのもの | ユーザー中心に行政機構のあり方を変革すること |
DXの本質は「デジタル化」ではなく、あくまで「ユーザー中心に行政機構のあり方を変革すること」にあると強調されました。
市民の洞察を政策へ:デザイン思考とDECIDIM
- デザイン思考:モノのデザインの思考をサービスに応用。「課題解決」「人間中心」を目的に、政策のエンドユーザーである市民の洞察を政策立案へ活かす。
- 市民参加型プラットフォーム「DECIDIM(デシディム)」
- バルセロナ市発のオープンソースで開発された、市民参加のためのデジタルプラットフォームです。
- 市民がオンライン上で政策提案、意見交換、投票、参加型予算編成といった市政プロセスに深く関わることが可能になります。
- 多様な参加手法が提供され、議論の流れや背景が透明に記録・公開されることで、意思決定のプロセスが「見える化」されます。
- 講演では、第二次世界大戦後のスペイン内戦期に、「デジタルの自治」を通じて当時の権力者(フランコ将軍)の目から逃れられる場所として、バルセロナで開発されたという背景も紹介されました。
- 日本国内でも加古川市や渋谷区などで導入され、市民共創のまちづくりに活用されています。
結論:民主主義で決めるべき未来像


最後に、民主主義のプロセスで、地域が、そして私たちが決めるべき問いが提示されました。
- 東京一極集中の是非
- 経済的効率か、国土の保全か、個人の選択か
- 所有から利用へ
- それぞれの地域の未来像
また、地域生活圏として「中核市を核とした圏域」「地域経済循環の構築」「官民連携による地域経営」など、中核市が果たす役割は今後益々増えていくと、締め括られました。
八王子市は、東京都唯一の中核市として果たすべき役割があるのだと、改めて実感する講演となりました。宇野教授は八王子市で育ったとも言われていましたので、次回は八王子市においてもぜひお話をお聞きできればと思います。
今後のまちづくりを考える上で、非常に有益な講演となりました!



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