【公明新聞1面 2025/1/17】命が救われる社会構築へ(阪神・淡路大震災30年)


6434人が犠牲となった阪神・淡路大震災から、きょうで30年。近年、大規模災害が頻発し、南海トラフ巨大地震の発生も懸念される中、次なる災害で一人でも多くの命を救うために、いま何が求められているのか。防災研究の第一人者として知られる河田惠昭・関西大学特別任命教授へのインタビューが公明新聞に掲載されました。

阪神・淡路大震災から30年

 ――阪神・淡路大震災が社会にもたらしたものは。

 河田惠昭・関西大学特別任命教授 巨大地震は、国が潰れるほどの国難災害になるという考えが一気に浸透した。また当時約900人が命を落とした「災害関連死」という言葉も広がり、問題視された。昨年の能登半島地震でも犠牲者の過半数が災害関連死で亡くなるなど、今も課題として残っている。

 ――南海トラフ巨大地震などが想定される中、命を守る対策の鍵は。

 河田 国土強靱化は、膨大な時間と財源が必要で、対策には終わりがない。そこで「相転移」という観点から防災・減災対策を考えることを提案したい。

 水が温度によって氷や水蒸気に変化する現象を熱力学では相転移と呼ぶが、災害時の社会現象でも何かが原因となり被害が一気に大きくなる相転移が発生することを私は2020年に研究論文として発表した。

 実際、1923年の関東大震災では死者の約90%が火災で亡くなったのに対し、95年の阪神・淡路大震災では、火災よりも古い木造住宅の全壊・倒壊により、約5000人が亡くなった。防火対策に加え、耐震化や家具転倒防止に注目が集まった。一方、東日本大震災では、津波警報に対し、住民の約27%がすぐに避難しなかったことが、被害拡大につながったと言われている。常に時代や社会によって変化する相転移を捉えた対策を打つことで、被害を最小化できるはずだ。

 ――具体的には。

 河田 少子高齢化が進む社会だからこそ、1人暮らしの後期高齢者らが犠牲になるケースを防がなければならない。相転移の観点から、津波が襲来しても助かる場所に住めるようにしたり、子どもや孫など複数の世代が一緒に住める住宅環境づくりといった、将来を見越した対策を整える必要がある。

 ――公明党に求められることは何か。

 河田 公明党には生命尊厳の哲学がある。命の尊さや、生きていることへの感謝の心を持つことの大切さを訴え、過去の被災者の経験と教訓を生かした大胆なビジョンを国民に積極的に示してもらいたい。大災害が起きても、一人でも多くの命が救われる社会になることを望む。


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