【視察】市民検診のデジタル化を考える


「AIの時代」と言われながら、八王子市の市民検診の現場では今も年間1万3,000件にのぼるスタンプ押しや手書き転記が続いています。先日、市内のクリニックを訪問し、現場の実態を直接ヒアリングしてきました。その現状と、デジタル化に向けた課題をご報告します。

現場で見た「紙の壁」の実態

市内のクリニックを視察し、市民検診の現場担当者から詳しくお話をうかがいました。そこで明らかになったのは、デジタル化とは程遠い現場の実態です。

年間約1万3,000件の検診に対し、複写式の問診票(4〜6枚綴り)へのスタンプ押し、10桁近い資格番号の手書き転記、マーカー引きなどの準備作業がすべて手作業で行われています。人為的ミスを防ぐための膨大なダブルチェックも欠かせません。

さらに、古い複写式用紙に対応するため、数百万円規模のドットプリンターの維持や専用プログラムの構築が必要であり、法律上の5年間保管義務を果たすための倉庫代・スペースも医療機関の経営を圧迫しています。

市民にとっての不便と健康リスク

この問題は医療機関だけの話ではありません。検診を受ける市民の皆さんにも大きな影響があります。

毎年同じ氏名・住所・既往歴を何度も手書きしなければならない負担は、特に高齢の方にとって大変です。また、前年の情報が自動で引き継がれないため、既往歴を書き忘れると医師が適切な判断(精密検査の要否など)を下せないリスクも生じます。予約・手続きの煩雑さが、特に働き盛りの世代や若年層の受診を遠ざける要因にもなっています。

「市民検診のデジタル化は、何よりもまず受診される市民の皆様のためにある」——この言葉が、今回の視察を通じて最も印象に残りました。

デジタル化への突破口

デジタル化を進めるうえでは、全施設への一斉導入ではなく、準備の整ったクリニックからモデル事業として先行実施し、効果を数値で示しながら段階的に広げていくアプローチが現実的です。東京都のデジタルサービス局(GovTech東京)との連携や、国のマイナポータルを通じた検診データの一元管理といった仕組みも、積極的に活用していくべきだと考えます。

まとめ

今回の視察は非常に問題意識を深めるものでした。医療機関の事務負担軽減は、そのまま医師や看護師が本来の医療に集中できる時間の確保につながります。それは最終的に、市民が受けられる医療の質の向上に直結します。

「前例がないからダメ」という壁を壊すのが、議員の役割のひとつだと考えています。モデル事業の実現に向けて、市・医師会・東京都をつなぐ働きかけを議会の場からも積極的に進めてまいります。

年間1万3,000件の手作業という現実は、デジタル化によって大きく改善できる課題です。医療機関の負担軽減と市民の利便性向上、そして受診率アップによる早期発見——検診DXの実現に向けて、引き続き取り組んでまいります。


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